治療期間を短縮できる？アンカースクリューを用いた矯正治療～メリットとデメリット～
皆さん、こんにちは。
前橋市龍蔵寺町の歯科【エール歯科矯正歯科クリニック】です。
「ガタガタの歯並び、早く矯正治療できれいにならないかなあ……」
歯並びをきれいにするためには長い矯正期間が必要ですが、少しでも早く矯正の治療期間が終わってほしいと願ってしまうものですよね。
じつは、従来では難しかった歯並びの乱れを効率的に動かすことができる「アンカースクリュー」を用いる矯正方法があります。
今回は、アンカースクリューを用いた矯正治療についてメリット・デメリットを含めてお話しします。
山田 裕之 院長
2003年 岩手医科大学 歯学部 卒業2007年 岩手医科大学 大学院 歯学研究科 博士課程 修了
2007年 岩手医科大学 歯学部 口腔保健育成学講座歯科矯正学分野 常任研究員
2012年 岩手医科大学 歯学部 口腔保健育成学講座歯科矯正学分野 助教 任用
2019年 岩手医科大学 歯学部 口腔保健育成学講座歯科矯正学分野 退職
2019年 エール歯科矯正歯科クリニック 開院
Contents
アンカースクリューで矯正の治療期間を短縮できる！
まずは、アンカースクリューとはなにか、矯正の治療期間が短縮できる理由を解説します。
アンカースクリューとは？
アンカースクリューとは、矯正用のネジのことで、ミニインプラントやマイクロスクリューなどと、呼ばれることもあります。
とても小さいネジで、8 ㎜以上の長いスクリューおよび1.4mm以上の直径の大きいスクリューを使用した場合に、成功率が高いとされています。
（出典：公益社団法人 日本矯正歯科学会_歯科矯正用アンカースクリューガイドライン より） >
アンカースクリューは、上顎や下顎の骨に埋め込むため、「純チタン」や「チタン合金」が使用されています。
チタンは、身体に埋め込んでもアレルギー反応を起こすリスクが少なく、矯正治療だけではなく、インプラント治療や骨折した際のボルトやプレートなど医療現場で広く使用されています。
とても小さなネジで、顎の骨の表面に固定されており、埋め込むのも治療後に取り除くのもとても容易な矯正装置です。
「アンカースクリューを用いる際は、手術をするの？」といった、心配があるかと思いますが、手術は必要ありません。
部分的な麻酔だけで、アンカースクリューを顎の骨に埋め込むことができます。
※完成物薬機法対象外の矯正歯科装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
エール歯科矯正歯科クリニックの矯正歯科について詳しくはこちら >
治療期間が短縮できる理由
アンカースクリューを用いることで、なぜ矯正の治療期間が短縮できるのか、2つの理由をみてみましょう。
1.一方向に歯を動かせる
矯正治療は、歯に装置を取り付けて、歯を1本1本並べます。
ただし、歯と歯が引っ張り合うため、動かしたくない方向へ歯が動くことがあります。
そうなると、動いてほしくなかった歯を元の位置に戻すのに時間がとられますよね。
そこで、アンカースクリューを用いることで、動かしたい部分だけを一方向に動かすのです。
奥歯はそのまま動かさずに前歯だけを後ろに下げたり、奥歯をさらに奥へ動かしたりすることができます。
アンカースクリューは顎の骨に埋め込まれているため、引っ張ってもその場所から動くことはありません。
そのため、固定されたアンカースクリューを用いれば、歯を一方向に動かすことができるのです。
これにより、効率よく一部の歯を動かすことができるので、矯正治療の期間を短縮できる可能性が広がります。
2.歯が予想していない方向へ動くのを防ぐ
矯正治療で歯並びを整えるために、抜歯が必要になるケースも。
特に、顎が小さくて、U字型の顎の骨の土台にすべての歯がきれいに並びきることができないケースでは、歯を並べるスペースを確保するために、前から数えて4もしくは5番目の歯（小臼歯）を抜くことがあります。
たとえば、抜いた歯が4番だった場合、3番目と5番目の間にはすき間ができますよね。
通常のワイヤー矯正だけであれば、奥歯を固定源として3番より前の歯を後方に動かすのですが、奥歯も同時に前方に動くことがあります。
このときにアンカースクリューを用いれば、3番目より前の歯全部を奥へ効率よく動かし、5番目以降の奥歯が前方へ移動するのを防ぐことができます。
アンカースクリューを用いることで、余計な歯の動きを防いで治療がスムーズに進むことが期待できるのです。
メリット
ここからは、アンカースクリューを用いるメリットを紹介します。
治療期間が短縮できる
動かしたい歯だけに力をかけることができるので、効率よく歯並びを整えることができ、結果的に治療期間が短縮する可能性があります。
もちろん、歯の動きや歯並びの状態により治療期間に個人差はあります。
ただし、アンカースクリューを用いた方が矯正治療を早く終えられるでしょう。
対応できる歯並びが増える
アンカースクリューを用いると、左右はもちろん、上下に歯を引っ張ることも可能です。
従来のワイヤー矯正だけでは難しいとされていた、奥歯をさらに奥に引っ張る治療や、歯を歯ぐきの方に押し込むように動かす（圧下）治療も、アンカースクリューがあれば対応することができます。
歯を理想の方向に効率よく動かせるので、歯並びの乱れが複雑なケースも対応できるのです。
顔つきによい変化をもたらす
矯正治療は、歯並びやかみ合わせを整えるのを目的としていますが、顔つきにもよい変化を与えることをご存じでしょうか？
特に、出っ歯や受け口の方は、唇を閉じたときに口元に突出感があるかと思います。
このような方は、矯正治療をすることで美しい横顔の指標とされる整った「Ｅライン」をめざすことができるのです。
鼻の先と顎の先端を結んだ線を「Ｅライン」としており、その内側に唇があるのが美しい横顔といわれています。
ワイヤー矯正だけでも横顔によい変化をもたらすことができますが、アンカースクリューを用いると奥歯はそのままで前歯だけを後方に引っ張ることができるので、口元の突出感をしっかり改善できることが多いのです。
また、笑顔になったときに歯ぐきが見える「ガミースマイル」の方は、アンカースクリューで歯を圧下させることでガミースマイルの改善をめざせます。
抜歯を回避できる
アンカースクリューで奥歯をさらに奥に引っ張ることで、抜歯をしなくても歯を並べるスペースを作り出すことができます。
従来では、抜歯が必要なケースでもアンカースクリューを用いることで、大切な歯を残せる可能性が広がります。
外科手術を回避できる
ガミースマイルや口元のゆがみがあるケースは、顎の骨を削る外科手術が必要になることがあります。
しかし、アンカースクリューにより、歯を圧下させることができるため、ガミースマイルや軽度の口元のゆがみであれば、顎の骨を削ることなく歯並びやかみ合わせを整えることができる可能性が広がります。
ただし、上下の顎の骨格に大きな問題があったり、左右の顎の骨の成長に差があったりするケースは、外科手術が必要になるため、精密検査をした上でご提案させていただきます。
患者さんの負担が軽減する
矯正装置には、歯に固定するワイヤー装置だけではなく、お口の外に固定源を必要とする取り外し式の「ヘッドギア」などもあります。
頭やおでこを固定源としているため、大きな装置で見た目も目立つのですが、奥歯を動かさずに前歯を奥に効率よく引っ張ることが可能です。
ただし、ヘッドギアなどの装置は、就寝中に装着する必要があるため、「装置を毎回付けるのが手間」「寝返りを打つと外れそう」などと、患者さんに負担がかかります。
このような患者さんの負担を軽減して、同じような役割を果たしてくれるのも「アンカースクリュー」のひとつの特徴です。
お口の中に固定源があるため、ヘッドギアのように目立つこともなく、日中も歯を動かすために力をかけ続けることができます。
デメリット
ここからは、アンカースクリューのデメリットを解説します。
麻酔が必要
アンカースクリューを顎の骨に埋め込む際は、麻酔を使用します。
大きな外科手術ではありませんが、外科的な処置が必要です。
時間にすると5分くらいで、アンカースクリューを顎の骨に埋め込むことができます。
治療後は、麻酔はほとんど必要なく、アンカースクリューを取り除けます。
数日は違和感がある
アンカースクリューのネジの頭部分が歯ぐきにあるため、舌で触れると違和感があります。
違和感は数日でなくなりますのでご安心ください。
緩みや脱落する可能性がある
アンカースクリューは、顎の骨に埋め込みますが、最終的には抜き取る必要がある矯正装置です。
そのため、顎の骨の状態やお口の清掃状態が安定していないと、緩みがでたり、脱落したりするリスクがあります。
脱落した場合は、位置を変更してアンカースクリューを埋め込んでから、治療を再開できますのですぐにご連絡ください。
もちろん、このようなリスクを避けるために、精密検査で顎の骨の状態をしっかり確認させていただきます。
アンカースクリューを使用するとよい症例
アンカースクリューを使用するとよい症例を紹介します。
・出っ歯
・受け口
・上下の前歯がかみ合っていない（開咬）
・かみ合わせが深い（過蓋咬合）
特に出っ歯は、前歯を奥に引っ張る必要があるため、奥歯を動かさずに効率よく前歯を動かせる「アンカースクリュー」を使用すると、口元の突出感がしっかり改善されるケースが多いといえます。
受け口は、下の歯が上の歯よりも前方にある状態です。
アンカースクリューで下の歯を後方に動かすことで、外科手術をしなくても歯並びを改善できる可能性を広げられます。
また、上下のかみ合わせのバランスを整えるのにアンカースクリューを用いることも可能です。
後方に歯を動かすだけではなく、歯を圧下させたり、歯を引っ張り出したりすることもできます。
歯並びが整っているように見えても、上下の歯がしっかりかみ合っていなければ、「噛む」という歯の役割を果たせません。
アンカースクリューを用いることで細かなかみ合わせを整えて、しっかり噛める歯並びを手に入れることができるのです。
アンカースクリューを用いた矯正治療の流れ
アンカースクリューを用いた矯正治療の流れを紹介します。
1.精密検査
2.埋め込み位置の確認と麻酔
3.アンカースクリューを顎の骨に埋め込む
4.矯正治療で使用
5.矯正治療後は抜き取る
まず、レントゲン撮影などの精密検査をして、アンカースクリューを埋める位置を決定します。
アンカースクリューを埋め込む位置が決定したら、部分的な麻酔である「局所麻酔」を行い、ネジをいれるように回しながら埋め込みます。
大掛かりな手術ではありませんので、アンカースクリューを埋め込んだ日も食事や入浴を普段通りしていただいてかまいません。
歯ぐきの腫れがなく、アンカースクリューが安定しているのを確認できたら、矯正治療で使用することが可能です。
アンカースクリューと、ワイヤーの装置に矯正用のゴムやバネを付けることで、歯を一方向に動かすことができます。
理想の位置に歯が動いたら、アンカースクリューは必要ありませんので、除去します。
このときは、局所麻酔は必要ないほど痛みは感じません。
アンカースクリューを埋め込んでいた部分は、一時的に穴が開いていますが、自然と治癒しますのでご安心ください。
矯正治療の期間が短くなる可能性のある「アンカースクリュー」
群馬県前橋市の歯医者【エール歯科矯正歯科クリニック】は、歯並びの状態に応じてアンカースクリューを用いた矯正治療を行い、理想の歯並びをめざします。
カウンセリングルームで歯並びのお悩みをおうかがいしますので、周りを気にすることなくお話しすることが可能です。
また、レントゲン撮影を行った際は、目で見て理解できるようにモニターで説明させていただきます。
当院は、土曜も19時半まで診療していますので、ご都合のよい日にご予約ください。
